スタジオのスタッフ用ロッカールームでの事でした。
レッスン着に着替えようとバッグからパンツを取り出したらヒートテック(UNIQLO)のタイツだったんです。
前日の深夜、寝ぼけながらレッスンの用意してたらパンツとタイツを間違えて持ってきてしまったんですね。
呆然としているとロッカールームにスタッフのA君がやってきました(A君は以前『万里さんはケミストリーの川畑に似てますね』と言ったニ分後に手のひらを返した裏切り者です)
「万里さん、どうしたんですか?」
「レッスン用のパンツと間違えてヒートテックのタイツ持ってきちゃったんだよ」
タイツを広げて見せるとA君はマジメな顔で答えました。
「あぁ。新しいオシャレですか」
オシャレじゃねぇよ。
「仕方ないからレンタルウェアを借りようか悩んでたんだ」
オシャレ発言には一切触れずに続けると、A君はある提案をしてくれました。
「あれ?でも万里さんはいつもスポーツ用のコンプレッションタイツを履いていましたよね?」
コンプレッションタイツとは運動時の疲労を軽減してパフォーマンスを向上させるタイツ。ワコールやNIKE、アンダーアーマーなどが有名です。
ちなみに僕が愛用しているのは2XU(ツー・タイムズ・ユー)というマラソンランナーやトレーニーに支持されているブランド。
「うん。今日も履いてる」
「それでレッスンすればいいじゃないですか」
「これだけで?それは恥ずかしいよ」
「大丈夫ですよ。大きめのTシャツで下にタイツを合わせるのが海外では一般的ですから。僕も2XUタイツ一枚でレッスンやトレーニングしてますし」
言われてみれば、A君や他のトレーナー達がTシャツに2XUタイツ一枚でトレーニングしているのを何度も見かけたことがあります。
A君の言葉を信じてTシャツにコンプレッションタイツ一枚でコーディネートしてみました。
「イケてます!」
満面の笑顔で親指を立てるA君。
そうか、イケてるのか。こういう格好は僕が気にし過ぎてるだけで、意外とみんな違和感ないのか。
新しいファッションにドキドキしながらロッカールームを出ると、休憩室にいたスタッフ達が僕を見るなり口々に話しかけてきました。
「ちょっと万里さんどうしたんですか!?」
「パンツ履き忘れてませんか!?」
「江頭2:50のコスプレですか!?」
その瞬間、確信しました。
絶対イケてないじゃん。
みんな違和感しか感じてないじゃん。
なんだよ江頭2:50て。
ついに笑い出すスタッフたち。納得がいきません。
「そんなに変かい?A君や他のみんなもコンプレッションタイツ一枚でレッスンしてたじゃん。なんで僕だとダメなの?」
「いや、ダメじゃないんですけど……」
一人の女性スタッフが涙を拭きながら答えました。
「なんかコンプライアンス的にアウトっぽいだけで」
訴えられるレベルでダメじゃねぇか。
「変じゃありません!」
後ろからの声に振り返ると、A君が真剣な表情で立っていました。そして静かに続けたのです。
「みんな、笑うなんて失礼だよ」
A君、僕のためにそこまで……。
「これは万里さん流のオシャレなんだから」
だからオシャレじゃねぇよ。
(結局、私服のカジュアルパンツでレッスンしました)