今日のお昼、電車で座っていた時のこと。
ふと前を見ると、向かいの座席に20代前半くらいの青年が座っていました。
流行の短パンに白のビッグTシャツ、スニーカーも白のNike エアフォースワン。
なんの変哲もない格好。
でも、この時僕は言葉にはできない違和感を感じたんです。
なんだろう?そう思いながら目の前の青年を見ていると違和感の正体に気がつきました。
青年の短パンの隙間から見えているんですよ。
青年の『リトル青年』的なモノが。
正直ビビりました。二度見しました。見たくないのに、目が離せなくて。
ちなみに今年の短パンのトレンドは『ゆったり目の短め丈』。
男性読者なら共感してもらえると思うのですが、丈が短いパンツを履くと座った時にポロリする危険があるため下着はボクサーパンツやショートスパッツのようにフィットするモノを履くんですよ、普通。
ですが目の前の彼はトランクスを履いてしまったようなのです。そりゃ見えるわ。
本人は脚を広げてスマホに夢中。まだ自分の置かれた状況に気づいていません。
これは教えた方が良いのだろうか?悩みました。
僕、たまに電車内でズボンのチャック開いてるサラリーマンとか見かけると、いつも教えてあげるべきか悩むんですよ。
事実を教えるのが親切なのは分かっています。でも他人から突然「チャック開いてますよ」なんて言われたらショックじゃないですか。
僕なんてガラスのハートなので、もし言われたら「あ、どうも」と平静を装ってチャック閉めた後に降りる駅じゃないのに途中下車してホームで一人泣き崩れますね。
他人にチャック全開を指摘されるのって、それくらい恥ずかしいじゃないですか。
で、今僕の目の前で起きている事はチャック全開どころじゃないレベルなんですよ。事故レベルなんですよ。
僕なんてプレパラートの上に載せるガラスカバーのハートなので、もし彼の立場で「丸見えですよ」なんて言われたら走行中の電車の窓から飛び降りますね。結果、多重事故ですわ。
しかしここで事実を教えなければ、彼はこの後もずっと恥ずかしい目に遭い続けるんですよ。
だったら彼のためにも教えなきゃ。よし決めた。言おう。彼のハートの強さを信じよう。
……じゃあ、なんて言えばいいの?
「見えちゃダメなモノのが見えてますよ」なんて言えない。気を遣って遠回しに表現してるのが逆に彼の尊厳をキズつけてしまう。
そうだ!モノが見えなくなればいいんだから「電車で座る時は脚を閉じて下さい」と言おう。
ダメだ。「文句あんのか!」ってトラブルになりそう。
ならば表現を可愛くして「お兄さんの『リトルお兄さん』がコンニチワしてるけど大丈夫ですか」とか?
あぁ、全然オブラートに包みきれていない。
事実のインパクトがオブラートを突き破ってる。
どう伝えようか悩んでいると、途中駅から乗ってきた高齢の外国人男性が僕の目の前に立ちました。
反射的に席を立って「プリーズ」と言って席を譲ると、男性は英語で話しかけてきました。
声が小さいため何を言ってるか分かりません。でも「席を譲ってくれてありがとう」的な内容なのは理解したので「ノー・プロブレム(気にしないでください)」と笑顔で答えました。男性も「Wow!」と笑ってくれました。
座席に座った直後、映画『マスク』のジム・キャリーばりに目を見開く男性。
彼も目の前の事故に気がついたのです。
立っている僕のズボンをクイクイっと軽く引っ張り、向かいの席の青年を小さく指さしながら話しかけてきました。
やはり声が小さいため何を言ってるか分かりません。でも
「あそこのボーイの『リトルボーイ』がグッドアフタヌーンしてるけど大丈夫なのか」
的な内容なのは理解したので
「ノー・プロブレム(問題ありません)」
と真顔で答えました。男性も真顔で「Wow……」と呟いて俯いてしまいました。
タタン、タタン……タタン、タタン……
列車の走行音だけが響く車内。
僕は心の中で
プロブレムしかねぇよ。
むしろビッグ・プロブレムだよ。
でもどうすりゃいいか分からないんだよ!
と叫び続けていました。
青年は次の駅で電車を降りましたが、あの時どうすればプロブレムを解決できたのか。
その正解は未だに分かりません。