「今日、ウチの猫が亡くなったの」
月曜日のレッスン。仲の良い会員さんが言いました。
よく見ると両目が赤くなっています。
たくさん泣いたのでしょう。
「最期はね、私の腕の中で眠るように逝ったのよ」
猫を抱いている情景が鮮明に浮かびました。
腕の中にある儚い命。
まだ温かい。まだ呼吸してる。まだ生きてる。
でも、その時間はもう短い。
強く抱きしめたい。
じっとしていられない。
大声で泣きたい。
そんなグチャグチャな感情を全て抑え、猫を優しく抱き、目に涙を溜めて見つめる姿…
「猫ちゃんは拾ったんですか?」
「えぇ。捨て猫だったの。小さくてニャーニャー鳴いてたのよ」
僕の飼っていた猫(大河)と同じでした。
僕も箱の中でニャーニャー鳴いてた猫を拾って育てたんです。
別れが必ず来るのは解っていたけど、いざその時がきたら我慢出来ずにワンワン泣きました。
ペットとの別れは、本当にツラい。
特に猫って噛むわ引っ掻くわで部屋も飼い主の手も傷だらけ。
その中でも最も大きな傷は死別した時の『心の傷』なんですよ。
この傷が1番ツラい。
フスマみたいに修復できないし、手の傷みたいに薬もない。
自然治癒を待つしかないうえに、いつ治るかもわからない。
しかも傷跡が完璧に消えることはありません。
でもね、思ったんです。
その猫ちゃんは、絶対に幸せだったに違いないって。
飼い主は悲しくて仕方ないけど、猫にしてみたら最高のハッピーエンドだったに違いないって。
だってね、猫って『居心地のいい場所』が大好きなんですよ。
大好きなご主人の大好きな腕の中で最期を迎える。
こんなの絶対幸せだったに決まってるじゃないですか。
きっと猫も腕の中で
「あぁ。居心地いいなぁ」
「ご主人、また来るから抱っこしてね」
と思いながら天に昇ったに違いありません。
だから、その猫ちゃんは絶対に幸せだったと思うんです。
そして願ったんですよ。
今はあの人を悲しませてる傷跡が、いつかあの人を温める思い出に変わってくれるといいなぁって。
消えない傷跡が、消えない思い出に変わってくれるといいなぁって。
きっとその頃にはあの子が帰ってくるはずだから。
「ご主人、ただいま」
って。
「抱っこして」
って。
ニャーニャー鳴きながら。