今日、とてもいい夢を見ました。
今回はその内容を皆さんにお話したいと思います。
この夢のお話をする前に、僕のネコの紹介をしなければなりません。
名前は大河(タイガ)さん。
このブログで何度も登場している、めっちゃ強気なネコです。
男らしい名前だけどメス猫なんですよ。
15年前のみぞれ混じりの雨が降る深夜、ダンボール箱の中で鳴いていたのを拾ったんです。
それから大河はスクスクと成長し、強気で、ワガママで、食いしん坊で、可愛くて、寂しがり屋で、そのくせに甘え方が不器用な可愛いトラ猫になりました。
『ネコ』という華奢でしなやかなイメージとは程遠い、シッポが短くてポッチャリした体型。
しかしその姿は何をしていても愛おしくて、見てるとつい
「おまえは本当に可愛いね」
と無意識に声をかけてしまうほどでした。
大河は僕の声が聞こえても、返事はおろか振り返りもしません。
その代わり、毎回短いシッポを2回、縦に振るんです。
その仕草はまるで
「当然でしょ」
と言ってるようでした。
とても人間らしいネコだったんです。
*
今年の2月7日。
大河は永眠しました。大往生です。
僕をはじめ、家族はワンワン泣きました。
だけど二度と起きないその寝顔すら愛おしくて、小さな箱の中で冷たくなっている大河を撫でながら
「おまえは本当に、可愛いね」
と声をかけました。
短いシッポはもう動きませんでした。
「今まで付き合ってくれてありがとうね」
と感謝を伝えました。
だけどやっぱり、大河のシッポは動きませんでした。
僕らはもっと、ワンワンと泣きました。
*
そして今日、夢を見ました。
夢の中で僕は階段を延々と登リ続けていました。
なぜか『夢を見ている』という自覚があり
「なんでこんな疲れる夢を見なきゃいけないんだ」
と文句を言いながら階段を登りきると、そこには部屋がありました。
扉を開けると、部屋の真ん中には小さいベッドが1つだけ置かれていました。
ベッドの上にモゾモゾとうごめく物体。
見覚えがある、茶色の丸っこいシルエット。
そこには大河が丸くなって寝ていました。
大河は僕に気がつくと目を丸くして
「え?なんでアンタがここにいるのよ」
と言ってるかのような驚いた顔をしてから、再び丸くなりました。
「いやそこは飛び込んでこいよ!」
と言いそうになりましたが
(ここで興奮したら目が覚めてしまう)
と、なんとか平常心を保ち、ゆっくりとベッドに向かい大河の横に静かに座りました。
大河は僕をチラっと見ただけ。再び背を向けて眠り続けます。
恐る恐る大河の背中を撫でると、夢とは思えないほどはっきりとした毛皮の感触がしました。
瞬間、色んな感情がこみ上げてきて泣きそうになりましたが、夢から覚めないように必死に感情を抑えました。
「ーー大河、おまえは本当に可愛いね」
しばらく撫でているうちに、いつものクセでつい話しかけてしまいました。
すると大河がムクっと起きて僕に振り返ったんですが、その顔が
めっちゃ不機嫌そうな顔
だったんですね。
その顔があまりもオカシクて思わず吹き出してしまい
「なんでだよ!」
我慢できずにツッコミを入れたところで目が覚めてしまいました。
*
目が覚めてしばらくボーッと天井を見つめていましたが、徐々に夢の内容を思い出して笑いがこみ上げてきました。
だって、大好きなペットと夢の中で再会したのに、めちゃくちゃ不機嫌な顔されたんですよ。
しかも生前もそんな感じでしたからね。
(アイツ、本当に何も変わってなかったな)
ついに堪えきれず、声を出して笑ってしまいました。
だってね。
僕が
「大河、おまえは本当に可愛いね」
と言った時、大河は不機嫌そうな顔してたけど、
やっぱりシッポを振ってたんですよ。
短いシッポを2回、縦にピッピッて。
聞こえてないふりしてて、しっかり聞いてたんですよ。
そういうネコだったんですよ、大河って。
強気で、ワガママで、食いしん坊で、可愛くて、寂しがり屋で、そのくせに甘え方が不器用で、
世界一可愛いトラ猫のままだったんですよ。
ーー気がつくと涙がボロボロこぼれていました。
いつの間にか笑いながら泣いてたんです。
枕に顔を埋めました。それでも涙は止まりませんでした。
泣いてた理由は悲しかったからではありません。
むしろ逆で、嬉しかったんです。
(お別れの時も、どこかで大河は僕の声を聞いてシッポを振っていたんだろうな)
って。
(感謝の言葉も届いていたんだろうな)
って。
そう思うと、涙が止まらなかったんです。
「ーーふぅっ」
久しぶりに泣いたらスッキリしました。
ベッドから起きて部屋の窓を開けると、吹き込む風には夏のニオイが混ざっていました。
夢を思い出しながら、まだ毛皮の感触が残る右手を見つめます。
「大河、可愛かったな」
「相変わらず丸かったな」
「毛艶も良かった」
「撫でると目を細めるクセも変わらなかった」
「それから、それから…」
そうつぶやくと、どこかでシッポを振る音が聞こえた
…気がしました。