今日も東京の気温は36度超え。
駅からスタジオまでの数百メートル歩いただけで滝のような汗。たぶん三キロくらい痩せたと思います。
スタッフルームに入った時は既にヘトヘトでした。
「おは…どうしたんですか万里さん!」
僕を見るなり席を立つB(以前僕に「私はケミストリーの川畑に似てません」と宣言させたスタッフ。理不尽の化身)
「全身びっしょりじゃないですか」
「外がめちゃくちゃ暑いんだよ」
「なるほど。それで途中で水浴びしてきた、と」
「汗な、これ」
服を着たまま水浴びとか砂漠の民かよ。
汗を流そうとシャワールームに向かうとBが言いました。
「これから自販機にジュース買いに行くんですけど、何か飲みますか?」
「ありがとう。じゃあポカリお願い。もし無ければスポーツドリンクならなんでもいいよ」
そう言ってお金を渡すとBは部屋を出て行きました。
ーーーいつも理不尽な絡み方をするけど、本当は気の利く良いヤツなんだよ。今度お礼にコーヒーでもご馳走しようかなーーー
そう思いながらシャワーを浴びていると外からBの声。
「万里さーん、ジュースは扉の前に置いときますねー」
「おー、ありがとう」
汗を流した後に飲むポカリは格別だろうな、とシャワールームの扉を開けると、そこには
ドクターペッパー
が置いてありました。
なんでだよ。
「あれ?飲まないんですか?」
呆然としているとBが更衣室に戻ってきました。
「ジュースありがとうね。ところでさ、なんでドクターペッパーなの?」
「自販機にポカリスエットが無かったんですよ」
Bの右手にはアクエリアスのペットボトル。
「それ、どうしたの?」
「自販機で買いましたけど」
「じゃあ俺もアクエリアスにしてよ」
なんでポカリorドクターペッパーなんだよ。スポーツドリンクならなんでもいいって言ったじゃん。スポーツ中にドクターペッパー飲むヤツなんて見たことねぇよ。
するとBは鼻で笑って答えました。
「知らないんですか?プロの格闘家は炭酸抜きのコーラを飲むんですよ」
「コレはドクターペッパーだからね」
「あ、ほんとだ」
「『ほんとだ』じゃねぇよ」
「でも名前に『ドクター』ってついてるくらいですから。きっと何かしら身体に良いはずです」
真っ直ぐな瞳で答えるB。彼はきっと権威に弱い人間なのでしょう(ちなみにドクターペッパーの『ドクター』は開発者のモリソンとアンダーソンが「炭酸飲料って健康に良さそうじゃね?」というフザけた理由で健康アピールのためドクターってつけただけで健康はおろか医者とも全然関係ないんですけど、彼らのイメージ戦略もあながち間違ってなかったんだなぁって思いました)
ノドも乾いていたし仕方なくドクターペッパー飲んでレッスンに行きました。ずっとマスクの中がドクターペッパーくさかったです。なにこれ。
レッスン終了後、スタッフルームに戻るとBが神妙な顔つきで座っていました。
「さっきはドクターペッパーを選んでしまってすみませんでした。お詫びにジュースをロッカー前に置いてあるので飲んでください」
Bのやつ、わざわざアクエリアスを買ってくれたのか。なんて真面目なんだ。
いつも理不尽な絡み方をするし権威にも弱いけど、本当は素直で気の利く良いヤツなんですよ。
「いや、僕も言いすぎた。せっかく買ってきてくれたのに文句言ってゴメン。よかったらコレ食べてよ」
そう言ってオヤツに食べようと思っていたガルボをあげました。少し溶けてたけど。
そして更衣室に戻ると、ロッカー前には
コーラ
が置いてありました。
そっちじゃねぇよ。