僕のダンスレッスンに
『Aさん(仮名)』
という生徒さんがいます。
Aさんの一番の魅力は笑顔。いつも明るくて一緒にいるだけで元気を分けてもらえるような存在です。
だから僕は
「いいなあ。Aさんみたいに悩みなく生きられたら幸せだろうなぁ」
と憧れていました。
ある日、Aさんと話をした時のこと。
Aさんは普通なら耐えられない、少なくとも僕には決して耐えられない苦労をしていたことを初めて知りました。
今までそんな素振りは一切なかったので驚くと、Aさんは笑いながら
「別に大変じゃないんだけどね」
と答えました。
この言葉は謙遜や強がりでもなく、実際にAさんはそれが普通だと思っているようでした。
それを聞いて僕は純粋に、本当に心から
「Aさん、カッコいいなぁ」
と感じたのです。
これは子供の頃、テレビのヒーローを見て「カッコいいなぁ」と憧れた時の感情と同じでした。
だってAさんの姿が、僕の大好きなヒーロー達とそっくりだったんですよ。
ーーーどんなに敵を倒しても次の強敵がすぐ出てくる。
その戦いに『やるか、やらないか』なんて優しい選択肢はありません。
『やるしかない』んです。
ボロボロに傷ついても自慢せず、愚痴も言わない。
誰かを妬みもしなければ責めもしない。
同情も、称賛も、羨望も望まず、ただひたすらにその『大変』を『普通』と感じるまで戦い続けるーーー
人知れず戦い困難に立ち向かうAさんの姿が、テレビのヒーロー達と全く同じだったんです。
ものすごくカッコいいじゃないですか。
そんな経験をしている人間の笑顔が魅力的なのは当然。こんなにカッコいいヒーローにダンスを教ている自分がとても誇らしく思えました。
ここまで書くと皆さん
「Aさんて誰だよ」
と気になりますよね。
普段なら個人情報なのでお教え出来ませんが、今回は特別に書かせていただきます。
そのAさんとは、
『あなた』
です。
病気したり、手術したり、家族の世話をしたり、ストレスフルな仕事をしたり。
それでも周囲に気を遣われるのがイヤで、ひっそりと人知れずに戦い続けている、あなたの事です。
あなたは「大した事ないよ」と言うでしょう。「こんなの普通だよ」と笑うかもしれない。
でも僕は知ってる。
大変じゃなかったワケがない。
苦しくなかったワケがない。
悲しくなかったワケがない。
ツラくなかったワケがない。
泣かなかったワケが、ない。
それでもあなたは目の前に現れ続ける強敵を倒し、壁を乗り越えてきました。
それしか選択肢がなかったから。
決してあなたは功績をひけらかす事をしませんでした。
承認欲求よりも大事なことを知っているから。
しかし、そのおかげで誰もあなたの壮絶で地味な戦いには気がつきません。
僕は、そんなあなたが大好きで大好きで、仕方がないのです。
あなたがその戦いを口にしないのと同様に、僕も応援の言葉を直接口にする事はないでしょう。
でも僕は、心の中ではいつもあなたを応援しています。
それはまるで子供がテレビの中のヒーローに向かって
「負けるなー!頑張れー!」
と拳を握りしめて応援するように、必死にあなたへエールを送り続けています。
なぜなら、あなたはヒーローだから。
必殺技も合体ロボもなければ、変身すらしない。
それでもあなたは、僕のヒーローなんです。
それだけは、忘れないでください。
僕のヒーロー様へ。
どうかこのブログが、僕のエールが、あなたに届きますように。