先日、冬の訪れと共に『目は口ほどに物を言う』ということわざを実感する出来事がありました。
今回は皆さんにその経緯をご報告したいと思います。
僕には散歩中の犬を見ると「あのワンコがウチの飼い犬だったら…」と瞬間的に妄想するクセがあります。
ゴールデンレトリバーを見ては「モッフモフじゃん!おまえモッフモフじゃん!!」とじゃれあったり
コーギーを見ては「俺がボスだから!俺の方がエライから!!」とオモチャを取り合ったり
柴犬を見ては「ホッペびろーん。びろろろーん」とほっぺを引っ張ったりする妄想です。
改めて文字にしてみるとかなりヤバい人っぽいですね。
でもペット飼ったことある人って、口に出してないだけで大体こんな感じじゃないですか。ヤバい人でほぼ正解みたいなとこあるじゃないですか。
とにかく、そんな妄想が僕の些細な楽しみだったんです。
だけど最近、飼い主さん達が僕を見ると避けていくんですよ。ほんと謎なんですけど。
『目は口ほどに物を言う』ということわざ、あるじゃないですか。
もしかしたら僕の目が『カワイイカワイイ』うるさいのでしょうね。
ほんと、プロダンサーの眼力って恐ろしいです。
まさに『目は口ほどに物を言う』は僕のためのことわざで
あ、『目は口ほどに物を言う』といえば苦い経験を思い出したわ。
15年前、人生初の海外旅行でシンガポールに行った時のことなんですけど、フレッシュジュースが飲みたくて店員さんに「モスト、デリシャス、フルーツドリンク、プリーズ」と言ったところ、ものすごい訛りの英語でまくしたてられ、何言ってるのか分からないから『目は口ほどに物を言う』ということわざを信じて目を見て頷いたら店員さんが「OK!」と豆乳を出してきたんですよ。
これ、僕が無知なだけかもしれないんですけど、シンガポールでは大豆はフルーツのカテゴリーなんですかね。
絶対に違うと思うんですけど。
しかも味はキッコーマンの豆乳とあまり変わりませんでした。ていうか豆乳なんて世界中どこで飲んでも味なんてほとんど一緒じゃないですか。
だけど英語では文句も言えないので、無理やり飲んで『オー、デリシャス!センキウ!!』言ったら店員さん2人いたんですけど2人とも爆笑してて。
どうやら僕をおちょくってたみたいなんです。
この『豆乳事件』を境に、もうあの国は2度と行かないと決めましたね。
僕の世界地図からシンガポールという国は消えましたわ。
ーー突然すみません、話が完璧に脱線したので戻します。
とにかく最近は僕の目が饒舌すぎて飼い主さんが避けちゃうっていう話なんです。
そして一昨日の夜、白金台の駅前での出来事。
信号待ちしていたら、僕の横に茶色のミニチュアダックスを連れた男性が立ちました。
ダックスは尻尾をブンブン振っているので、お散歩が楽しくて仕方ないのでしょう。
まぁ、そんなの見たら妄想しますよね。妄想せざるをえないですよね。
「(お散歩が楽しみなのかー?首長くして待ってたら身体が長くなっちゃったのー?大変ですねー)」つって。
そしたら飼い主さんがポツリと言ったんです。
「えぇ。この子、散歩好きなんで大変ですよ」
と。
そして信号が変わる前に、早足で来た道を引き返していきました。
ーーーなぜ妄想の内容を知っているんだ…
なぜ飼い主が僕の妄想を知ることができたのか。
いくら『目は口ほどに物を言う』といっても、そこまで細かく伝わるわけない。そもそも僕は『ちくわ丸(脳内でのダックスの名前)』しか見ていなかったので、飼い主とは目もあっていません。
まさか彼はエスパーで僕の頭の中を覗いたのか?それとも僕はいつのまにか『サトラレ』になっていて考えた事がダダ漏れになっていたのか?
動悸は激しくなり、冷や汗は止まりません。
頭の中を様々な可能性がめぐり、一つの答えにたどり着いた瞬間、背中を一筋の冷たい汗が流れました。
「…まさか?」「いや、そんなバカな!」
何度もその答えを打ち消しました。
何度も何度も何度も何度も。
しかし最終的にはその『答え』を受け入れることになり、言葉が自然と溢れました。
「妄想が口に出ていたのか…」
『目は口ほどに物を言う』ではなく、口で物を言ってたっぽいんです。
ただの発言ですよね。
飼い主さんが僕から離れたのも納得いきました。
おそらく、今まで遭遇した飼い主さん達も同じ理由でしょう。
他人のペットを見つめて独り言なんて完璧に不審者じゃないですか。
しかも夜中。超怖いじゃないですか。
いつ頃からやってたのか見当つかないとこなんか震えが止まらないほどの恐怖じゃないですか。
あまりの恥ずかしさに動くことが出来ず、しばらくその場で空を仰ぐ事になりました。
脳裏には逃げていった飼い主さんの顔がハッキリと焼き付いています。
彼の目は明らかに「ヤバい人だ!」と言っているようでした。
まぁ、大正解ですよね。
「目は口ほどに物を言う、か…」
無意識につぶやいたセリフは、白い息となって夜の空気に溶けていきました。
冬はすぐそこです。