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猫探し事件。転職と天職

ハウスダンスインストラクター万里の日記
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『迷い猫を探しています』

先日、スーパーの帰り道で張り紙を見かけたんです。

細かく書き込まれた内容からは、飼い主がどれだけ愛猫を心配しているのかがヒシヒシと伝わってきました。

猫の写真をよく見ると、最近よく見かけるノラ猫にそっくり。

その時、自分の猫が脱走した時の事を思い出して

(これは一刻も早く猫ちゃんを飼い主さんの元に送り返さなければ…)

と使命感に近いモノを感じました。

そんなワケで張り紙をスマホで撮影し、飼い主の電話番号をリダイアルに登録してから猫探しをはじめたのです。

ーーーそして30分後。

裏路地の片隅。僕の目の前には例の猫がいました。

張り紙の写真を見る限り、この猫で間違いありません。

実は僕、猫探しがめちゃくちゃ得意なんです。

過去に3回も迷い猫を発見・保護してますからね(実話です)

もしかしたらダンサーよりも天職かもしれません。

そしてほら、僕は今ダンス業が休業中なんですけども、これを機に『探偵(猫探し専門)』を開業しようかな、とも思っているんですよ。

将来どうなるかわからないんでね。

さっそく飼い主さんに電話して本人(本猫?)の確認をとります。

「もしもし」

電話にでた飼い主さん(女性)の声には元気がありません。心労がたたっているのでしょう。

「突然失礼します。張り紙の猫ちゃんの件でお電話しました」

「あ、ありがとうございます!」

「確認なんですが、猫ちゃん見つかりましたか?」

「それがまだなのよ。だから新しい探偵さんに依頼し直したの。だってね、最初の探偵さんのカンジが悪くてーー」

ここから5分、探偵のグチが始まりました。

まぁ僕もわかるのですが、猫が見つからない時って不安で誰かに話を聞いてほしいんですよ。

この『飼い主の不安を理解し寄り添う』というのも猫探しには重要であり、やはり僕は『探偵業に向いている』と言えますよね。

彼女のためにも、早く確認を取って安心させなければなりません。

「なるほど。大変でしたね。ちなみにその猫…」

しかし僕のセリフを遮って彼女は話し続けます。

「それで一昨日は『ウチで見かけた』って連絡があってね。文房具店さんからなんだけど。でも見に行ったら全然違う猫だったのよ。そういえばあそこのオーナーさん、こないだも自転車に乗っていたらーーー」

ここから10分、文房具店主のおもしろエピソードが始まりました。

まぁ僕もわかるのですが、愛猫がいなくなるとめちゃくちゃ寂しくなるんですよ。

探偵を目指す者として会話に付き合ってあげたかったのですが、目の前の猫がそろそろどこか行きそうな雰囲気だったので、というか僕も通行人からジロジロ見られてそろそろ通報されそうな雰囲気だったので、強引に本題に入りました。

「あの、お宅の猫ちゃんだと思うんですけど、今僕の目の前にいます」

「本当ですか!?」

「はい。写真の柄の猫ちゃんです。他に判別しやすい特徴ありますか?」

「えーと、重いです」

それは判別しにくい。

「見た目でわかりやすい特徴ありますか?例えば、この子は両前足の先が白いんですけど」

「あ、それ違います」

ーーかなり長電話をしましたが、結局『猫間違い』でした。

どうやら僕に探偵は向いていなかったようです。

「お力になれずに申し訳ありません。それらしい猫ちゃんを見かけたらまたお電話します」

「いえ。でもありがとうね。またお話を聞いてね」

電話越しの彼女の声は、最初よりも明るくなっていました。

そしてその声を聞いて思ったのです。

どうやら僕が転職すべき仕事は、僕の天職は、

『悩み相談室』なんじゃないか

と。

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