「エクスキューズミー?」
渋谷行きの銀座線。
表参道駅を出発した直後、隣に座っていた外国人カップルに声をかけられました。
振り返ると男性の方がスマホ片手に不安そうな顔。道でも聞きたいのでしょう。
簡単な英語ならなんとかなるかな、と「ヤー」なんて返事したら、男性はなんとスペイン語で喋り出したのです(なぜスペイン語とわかったのかと言うと、NHKで深夜に再放送される「旅するためのスペイン語」を何度か観ていたから)
困っていることは分かるんですが、彼が何を話しているか全く理解できません。
「I’m sorry, I don’t understand Spanish.(本当ごめん、スペイン語わからないや)」
そう返すと男性は「オーケー」と言い、ゆっくりと丁寧にスペイン語を話し出しました。
いやスピードの問題じゃねぇんだわ。
僕がうろたえていると、彼はスマホを取り出して画面を見せてきました。
画面を埋め尽くす純度100%のスペイン語。
電車の乗り換え案内アプリっぽいけど、何が書かれているのかサッパリわかりません。
「Googleレンズでリアルタイム翻訳させればなんとかなるか?」
なんて考えながら彼のスマホ画面を見ていると『Shibuya』の文字。
このカップル、もしかしたら渋谷駅に行きたいのかも。
「シブヤ ステーション?」
そう尋ねた瞬間、カップルの顔はパァアッと明るくなりました。
そして彼は何度もスマホ画面の『Shibuya』を指差しながらこう叫んだのです。
「ドコヤネン!」
なんで急に関西弁なんだよ。
あとなんでキレ気味なんだよ。
電車内に響き渡る外国人の関西弁。しかも巻き舌。不意打ちすぎる。
向かいの席の女性は顔を伏せて肩を小さく震わせていました。
ーーーまもなく渋谷、渋谷ですーーー
車内にアナウンスが流れてきました。
あぁ。いま渋谷駅に着いたことをカップルに伝えなければ!
焦った僕は大声でこう答えてしまいました。
「ココヤネン!」
カップルは満面の笑みで僕に「グラシアス!(ありがとう!)」と言い、電車を降りていきました。
これ、僕が知らなかっただけだと思うんですが、
関西弁て万国共通語なんですね。