今の話

六本木の天才策士に会いました

ハウスダンスインストラクター万里の日記

近年稀にいる天才策士に遭遇したので皆さんにお話したいと思います。

あれは昨晩、六本木ヒルズのツタヤに行った時のことでした。

僕が男性ファッション誌のコーナーで立ち読みをしていると20代後半くらいの男女のペアがやってきて横で雑誌を読みながら会話をし始めたんです。

この男女は距離感や言葉使いからして友人のようでしたが、彼は色んな雑誌のページを彼女に見せては

「どんな服の男性が好み?」とか

「デート行くならどこがいい?」とか

「どんな部屋なら遊びに来たくなる?」といった質問をしていたので彼女に好意を抱いているのは誰が見ても明白でした。

この『本屋で相手の好みリサーチ』は僕もやったことがあるので2人の会話を聞きながら「彼の恋が実るといいなぁ」と心の中で応援しつつ立ち読みを続けました。

すると突然彼女は一冊の雑誌を取り、ページをめくって「コレ!この男の子、私の友達!」とか言いだしたんですよ。

そして彼もそのページを覗き込んで「うわっメチャクチャカッコいいじゃん!」と答えたんです。

女「でしょー!めっちゃカッコいいよね」

男「こんなカッコいい人が友達なの?」

女「うん。私の周りはみんなカッコいいのよ」

男「あ…そうなんだ。いいね…」

彼の返事は露骨にテンション下がっていて、それを聞いて僕も彼女に対して「オマエなにデート中に他の異性の自慢しとるんじゃ」とハラワタが煮えくり返ってました。

僕の若い頃を彼に重ねていたんですよねっていうか、男ならほぼ全員が彼にあの頃の自分を重ねたと思うんですよ。

そして彼は「俺なんて雑誌に一度も載った事ないし、良い服を着ても『着られてる』ってよく言われるし…』と今にも消えてしまいそうなボソボソ声で自嘲気味に口にしました。

どうやら好きな人からの男友達自慢攻撃の前にすっかり戦意を喪失したようです。

ボクシングで例えるなら完璧にテクニカルノックアウト状態だったので試合続行は無理だと誰もが思った、その時でした。

女「何言ってんの。『私の周り』にあんたも含まれてるっつーの」

男「え…」

女「ていうか、あんた私の周りの中でも一番かっこいいから。マジで」

男「えぇっ!?」

彼女のセリフを聞いた瞬間、彼がめっちゃ良い笑顔になったんですよ。

きっとマンガで彼の心境を表現するなら、確実に彼の周りには花が散りばめられて「アハハ」とか「ウフフ」と言いながら野を駆け回ってる描写になっていたと思います。

そしてこのやりとりを聞いて僕は彼以上に笑顔になり(怪しまれるのでとっさに雑誌で顔を隠しましたが)、彼女に対して心の中で「アンタすげぇよ」と感服していました。

自分に好意があることを理解した上で、追いかけてきた相手を一回突き離してからの引き寄せ。

隙のない完璧な策略。

恋愛の諸葛亮孔明が六本木にいました。

男なら好意を持ってる相手にこんな事をされたらますます好きになりますよ。好きにならざるを得ないのですよ。

彼はさっきまでのボソボソ声とは打って変わってフニャフニャ声で「そ、そうかなぁ」と嬉しそうに照れるので、横で聞いていた僕までつられて照れてしまいました。

彼も僕も完全に彼女の術中です。

そして彼女は少し拗ねた口調で「でも私はあんたの周りの『めっちゃカワイイグループ』には勝てないのよねー」と続けました。

もうこれは彼女からのサービス問題みたいなもので、ここで「そんな事ないよ。君が一番可愛いよ」と答えれば彼の恋が実るのは確実です。

勝利は目の前でした。

ーーしかし、ラグビーで日本が世界の予想を裏切ったように、この男も僕の予想を裏切りました。

彼はフニャフニャ顔のまま「アハハハハー」と笑うだけだったのです。

それを聞いた彼女は真顔で「そこ笑うところじゃないから」と言い別の雑誌コーナーにスタスタと歩きだし、彼も慌てて追いかけていきました。

僕は2人の背中を見送りながら、遠くで「カンカンカンカンッ!!」と試合終了のゴングが鳴った気がしました。

どうやら今度こそ彼は完全にノックアウトされたみたいです。

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