今の話

病院でアメをもらいました

ハウスダンスインストラクター万里の日記

数週間まえから頭にデキモノが出来て最初は吹き出物かと思ったんですが、どんどん大きくなってきたのでとりあえず病院に行って来たんですよ。

大丈夫とは思うけど、手遅れになって手術とか超怖いのでね。

ほら、僕のレッスンに参加してる人の98%は僕に会えるのを楽しみに一週間を過ごしてるじゃないですか。

「万里さんに会えないと一週間が終わった気がしない」「なんなら万里さんの自宅に行って一目顔を見るだけでも良い」なんて人がほとんどじゃないですか。

僕が手術なんかしてレッスンを休んだら皆んなが悲しむと思うんですよ。

そんな皆んなの事をーーあなたの事を考えたら慎重にもなってしまうんですよね。

守るべき存在が僕を臆病にしたのでしょう。

というわけで、今日はレッスンの合間に病院に行ってきました。

「今日はどうしましたかー」

この先生、僕の右手(一部)が壊死した時にしばらくお世話になった女医さんで今ではすっかり顔馴染みになりました。

「頭にデキモノができてしまって。なんでもないと思うんですが一応念のために診てもらっていいですかね」

「はい。あー、これですか。粉瘤ですね。これは手術です

手術とか超こえぇ。

「…手術以外に解決策はないですかね。自分で潰して中身を出すとか」

「解決策は手術しかありませんよ。ご自分で潰すと化膿するし最悪のケースは命の危険すらあるのでおススメしません」

手術しなくても超こえぇ。

「そうですか…」

「あ、でも手術といっても簡単なヤツですよ。すぐ終わるしココで出来ちゃうレベルなので手術しちゃいましょうか」

「今日ですか!?」

「はい。今日は患者さん少ないし」

「でも家族とか呼ばなきゃ…」

「呼ばなくていいんで今やっちゃいましょう」

僕が話し終わる前に若干被せ気味に先生のGoサインが出たので急遽手術することが確定しました。

(粉瘤を知らない人に向けて少し説明すると、粉瘤とは皮膚の下に老廃物が溜まってコブのようなシコリができる症状です。
粉瘤の摘出手術は麻酔含めて30分くらいで終わるし入院の必要もありません。
当然、術後にダンスをするのも問題ないくらい本当に軽い手術なのです)

手術が決まった僕には1つだけ心配事がありました。

ほら、僕と付き合い長い人はご存知だと思うのですが、僕ってものすごい繊細なハートの持ち主じゃないですか。

ガラスハートどころじゃなくプレパラートハートじゃないですか。

なんならプレパラートの上に載せるガラスカバーハートで顕微鏡のピント合わせてるだけでうっかり割れるレベルじゃないですか。

要は手術とか怖くて泣くじゃないですか。

だから手術前に先生に

「すみません。恥ずかしいんですが僕は手術とか痛いのが本当に怖いので術中に泣いたりすると思います。だけど気にせず続けて下さい」

と伝えました。

「大人なのに臆病なんですね」と笑われるかなと思っていたのですが、先生は笑いもせず

「その『怖い』という感情は弱いとか臆病とか関係なく想像力が豊かだからですよ。恥ずかしい事なんかじゃありません。もし怖くなったら会話して気を紛らわせますから安心して下さいね」

と優しく返してくれたんです。

ーーこの言葉で心がスゥッと軽くなりました。

人の痛みを取り除くだけでなく、相手の痛みを理解し寄り添う。

この『相手と向き合うだけでなく寄り添う』という先生の姿勢はインストラクターとして、そして人として見習うべきだと感動しました。

いよいよ麻酔も効いてきて手術がはじまりました。

最初は余裕だったのですが、頭部を切られたり縫われる生々しい感触が想像力を掻き立てるためどんどん不安になってきたんです。

「先生、会話で気を紛らわしていいですか」

「いいですよ。でも麻酔が効いてるから痛くはありませんよね」

「はい。痛みは全くありません」

「私はね、この麻酔というのは本当に素晴らしい薬だと思うんですよ。知ってました?効き目のある薬って普通は高いんだけど麻酔って結構安いんですよ」

「へー、そうなんですか。言われてみれば麻酔のコスパって考えた事が無かったなぁ」

「麻酔って当たり前に使うから気にしませんよね。でも、もしこの世に麻酔が無かったらみんなのたうち回って手術していたかもしれないんですよ。もしくは麻酔の値段が高かったら貧しい人は痛みに耐えながら治療することになってたんです。ホント、麻酔に感謝ですよ」

お医者さんから『麻酔』についてじっくり聞くことなんて今までになかったので、僕の興味は完全に先生の話に向いて気がつくと手術の恐怖なんて忘れていました。

そしたら先生は何を思ったか突然

「だってね、いま〇〇を切って△△を糸で釣り上げているんですけど全然痛くないでしょ?」

と実況中継を始めたんですね。

何考えてやがるんですか先生、と。

想像力の手助けしてどうするんだ、と。

泣くぞ、と。

つーか泣いてるぞ、と。

「そう…なん…ですか」

僕の声が震えてるのに気づいた先生はあわてて

「あぁ!ごめんなさい!でもこないだ手術した患者さんも男性でしたけど泣いていたので恥ずかしくないですよ!」

「本当ですか…?その人は…何歳くらいだったんですか」

「…小学生の男の子…でした」

子供じゃねーか。

そして先生は傷口を縫いながら

「小学生…の女の子は…フッ…泣きません…でした…フフッ」

と続けました。

今度は先生の声が震えていたんです。

先生、笑うのめちゃくちゃ我慢していたんですよ。

ーー手術を終えた後、先生からの注意事項を涙目になりながら聞いて「ではまた月曜に来てください」と言われて部屋を出ようとしたら「あ、待ってください!」と呼び止められました。

「アメ、食べます?」

完全に小学生の男の子と同じ扱いじゃないですか。

僕、今年で40歳になるんですけどね。

結局アメはもらったんですが、その時に涙がこぼれたんですよ。

それ見てやっぱり先生は笑ってました。

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