昨日、変な夢を見ました。
ハムスターにオススメ料理を教えてもらう夢です。
ーーー枕元でガサゴソ音がするので目を開けると、そこには頬袋をパンパンにしてウットリと恍惚の表情を浮かべるハムスターが立っていました。
その幸せそうな顔があまりにも可愛かったので、何を食べているのか聞いてみました。
「なに食べてるの?」
「ンァ?エフォンファン」
「ちょっと何言ってるかわからないです」
するとハムスターは急に真顔になり、口の中のモノを飲み込むとチッと舌打ちしてから喋り出しました。めっちゃ早口で。
「なんや自分サンドウィッチマンの富澤たけし気取りか。メロンパンやメロンパン。あんなぁ、人の食事ジャマしたらアカンでほんま。マナー違反やからな。人として最低の行為やぞ。次やったらマナーの一発免停やから気ぃつけや!」
「す、すみません」
なぜか関西弁でキレるハムスター。
現実ならハムスターが僕の部屋にいる事も、喋ることも、そして理不尽にキレることもありません。しかし夢なので「一発免停は困るなぁ」と思って素直に謝りました。
「あの、ハムスターの食事ってヒマワリのタネとかじゃないんですか?」
「それめっちゃ偏見やで。じゃあ逆に聞くけど、日本人の主食は寿司と天ぷらか?格好はチョンマゲして着物なんか?ちゃうやろ。今の質問それと一緒。ナンセンスの極みやわ」
なぜこの齧歯類は1の質問に対して10返してくるんだろうか。しかもキレ気味で。
「あとこのメロンパンは特別やねん。むっちゃ特別なヤツやねん。大事なことやから2回言うたで」
「高級なんですか?」
「ちゃうわ。コンビニで買える普通のメロンパンや」
「はぁ…」
あれ?そういえば僕もメロンパン買ってたな。確かデスクの上に…無い。
コイツが食べてたの、絶対に僕のだ。
「なんの変哲もないメロンパンをな、安くてなんの取り柄もない庶民のメロンパンをな」
人のメロンパンを勝手に食べといてなんだその言い草は。
「こう、トースターで焼くねん。あ、焼きすぎんなや。表面に軽く焦げ目がつく程度やで。これだけでごっつウマなんねん。美味すぎて全身の毛という毛が全部抜けるほどや。ほんまビビるで」
全身の毛が抜けるってのは美味しさの表現としてどうなんだろう。たしかにビビるけど。
「外側はカラメル状でザクザクやねんけど、中はしっとりフッワフワやねん。そんで砂糖とバターの風味が口の中いっぱいに広がるんや。ジュワ〜って」
味を思い出したのか「うまぁ…」と呟き再び恍惚の表情になるハムスター。口を半開きにしてヨダレを垂らしています。
さっきまでは可愛いく見えたのに今はバカっぽく見える。不思議。
「ジュワー、ですか」
「は?自分バカにしとんのか?全然ちゃうわボケ。ジュワ〜、や。最後のナミナミがポイントやで。言うてみ」
「(なんで会話なのにそこまでわかるんだよ)」と思いながらも、ついペースに乗せられて答えてしまいました。
「ジュワ〜」
「ちゃうちゃう。ジュワワワ〜、や」
「さっきと違うじゃないですか」
「覚えとき。料理の世界ってのは日々変わるもんなんや。ええから言うてみ?口の中いっぱいに幸せが広がるで」
「ジュワワワ〜」
「声が小さい。もう一度!」
「ジュワワワ〜!!」
自分の声で目が覚めました。
しかも声が大きくて目が覚めたというか、その『ジュワワワ〜』が本当に美味しそうだったんですよ。
セリフを言った瞬間、本当に口の中いっぱいに砂糖とバターの風味が広がったんです。
「うまぁ…」
思い出しただけで無意識に言葉がこぼれました。
ふとベッドサイドの鏡を見たら、恍惚の表情で口を半開きにしてヨダレを垂らしていました。
夢で見たハムスターと同じ顔。そう、
今まの人生で1番幸せそうで1番バカっぽい顔でしたーーー
と、いうことで。
今日メロンパンを買ってきました。
そして
焼きました。
ゴクリ…。
焼いたおかげでものすごく良い香り。ノドが鳴ります。
夢にまで見た、というより『夢で見た』ハムスター直伝のメロンパン。
彼が言うところの『むっちゃ特別なヤツ』です。
しかしこれで不味かったらどうしよう。
そもそも夢を信じて実行に移すのも冷静に考えるとどうかしてると思う。
実物を前にして急に不安になってきました。
えぇい、そん時はブログで笑い話にでもしてやる。
そしてあのハムスターを夢の中で『トムとジェリー』ばりに追いかけ回してやるんだ。
そう覚悟を決めて一口食べると…
なにこれめちゃウマ。
外はザクザクなのに中はしっとりフワフワ。鼻に抜ける豊かな香りと口いっぱいジュワワワ〜と広がる砂糖とバターの幸福(ハーモニー)。
「う、うまぁ…」
これは言う。言わざるを得ない。
あのハムスター、本当だったんだ。
ほっぺたを膨らませながらメロンパンを頬張っていると
(…な、ビビるやろ?)
遠くから関西弁が聞こえた……気がしました。