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有意義なムダな時間の過ごし方

ハウスダンスインストラクター万里の日記
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緊急事態宣言下のため都内でのレッスンは全て休講。

そのため火曜・水曜は珍しく連休でした。

しかし世間はGWで渋谷・原宿・表参道は人が多くどこにも行けません。

火曜日の昼下がり、せっかくの連休を有意義に過ごせないかと部屋の隅に目をやると、そこにはホコリを被ったブラジリアンワックスの姿がありました。

「…また逃げるのか?」

左肩を見ると、悪魔の格好をしたブラック万里が座っていました。

「逃げるって、なんだよ」

「オマエ、いつも逃げてんのな」

「別に逃げてないよ」

「いいや、逃げてるね。最近は丈の長いパンツしか履いてないじゃん」

「はぁ?それがなんだよ」

「2度めの脱毛から逃げた結果、スネ毛がボーボーになったんだろう?」

ブラック万里の鋭い指摘に言葉が詰まりました。

素晴らしいモノを手に入れたら見せたくなるのが人間の性。

初めての脱毛で美脚を手に入れた僕はこれみよがしに短パンを履いて脚部をひけらかしていました。

しかし時間がなくて2度めの脱毛を先延ばしにしていたら面倒くさくなり、結局丈の長いパンツで脚を隠すことにしたんです。

「時間がない」を口実にしていたのに、いざ時間が出来たら何もしない。

ブラック万里の言う通り、僕は逃げていたんです。

「…やるよ。やってやらぁ!」

「そうだよ万里!そして今度こそ美容系YouTuberになるんだ!」

こうして『僕vs.ブラジリアンワックス:2戦目』の火蓋が切って落とされました。

まずは太ももからスネにかけて。なんと1時間くらいで終了しました。

2回目は毛根が小さくなったのか、それとも脱毛に慣れてきたのか。

とにかく初めての時よりも痛みもなくスムーズに処置できたんです。

少しだけ物足りなさを感じていると、再びブラック万里の声が聞こえました。

「まだあるだろう?」

「いや、脚部はもう無いよ」

「あるじゃねぇか。もっと上。太ももの付根だよ」

「太ももの付け根って…本丸じゃねぇか!ダメだろ!

「ビビんなって。そこにはムダ毛という名のネタが詰まってるんだ。いわば金脈だぜ」

「でも、ここを処理したらガチ勢っていうか一線を越えるっていうか…」

「『素晴らしいモノを手に入れたら見せたくなるのが人間の性』なんだろ?なら、そこを処理して世間に見せればいいじゃねぇか」

「それ犯罪だから!そんな事したら俺だけ『生涯休業要請』が確実だから!」

「やれやれ、また言い訳かよ」

「おまちなさい!」

「「お、お前は…」」

右側から聞こえた声に僕とブラック万里が振り返ると、そこには天使の格好をしたホワイト万里が立っていました。

「万里よ。自分を見失っていけません。いくらネタになると言っても下ネタはいけませんよ。レッスンはおろかこのブログも削除される恐れがあります

「だよね。良かった、ホワイト万里が話をわかってくれて」

「さぁ、おへそ周りを脱毛するのです」

「やっぱり脱毛するのかよ!」

「そこもムダ毛という名のネタが詰まっているのですよ?金脈ですよ?」

「ブラック万里と同じこと言ってるな。そもそもおへそ周りを脱毛しても誰にも気が付かれないじゃないか」

「安心なさい。丈の短いチビTを着て腹出しファッションになれば解決です」

「なんでお前らは俺を破滅に向かわせたいんだよ!」

「『素晴らしいモノを手に入れたら見せたくなるのが人間の性』なんでしょう?なら、そこを処理して世間に見せればよいじゃないですか」

「もうブラックもホワイトも大差ないな」

文句を言いながらも、腹部の脱毛には心が揺れました。

僕は腹筋のトレーニングでドラゴンフラッグという種目を10レップ×3セット行うのですが、いつも途中でウェアがめくれてお腹が丸出しになり恥ずかしい思いをしていたんです。

おへそ周りを脱毛すれば、ウェアがめくれても恥ずかしくありません。

ということで延長戦『おへそ周り脱毛』に突入。

毛の流れに沿ってワックスを塗り、腹圧を高めて皮膚をピンと張ってから一気に剥がしました。

いってぇえええええええええええええぇえええええええええええええええええええええええええええええええぇえええええええええええええええええええええ!

痛みのあまり、おへそが裂けて中からエイリアンでも出てくるんじゃないかと思いました。

ていうか、よく考えたら僕はおへそが超敏感で弱点なんですよ。

我ながら最大の盲点でした。

痛みが収まり、おへそ周りを見てみると1/4しか脱毛出来ていません。

顔を上げると、ブラック万里とホワイト万里が並んでワックスの容器に腰を掛けています。

二人は僕を優しく見つめながらユックリと頷きました。

どうやらあと3回はエイリアンを出さなきゃいけないみたいです。

ーーーそんなこんなで、なんとか腹部の脱毛が完了しました(経過は痛々しい上に面白くないので割愛します)

鏡の前でツルツルになった身体を見ながら

「僕あ今まで『時間がない』を言い訳にしていたが、時間があってもロクなことしないんだな」

と思いました。

早く緊急事態宣言を解除してほしいですね。

緊急事態宣言が延長されたら今度こそ本丸に手を出してしまいそうですもん。

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