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腕の腫瘍を摘出手術してきました【僕と女医さん】

ハウスダンスインストラクター万里の日記
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右腕の前腕に腫瘍ができたので日帰りの摘出手術に行ってきました。

場所は近所のかかりつけの病院(左手が壊死した時や頭に毛包炎ができた時にお世話になりました)

今日は手術室で交わした僕と女医さんとの会話をご紹介します。

手術室にて

「先生、何度やっても手術には慣れないんです。こんなに怖がりなのは僕だけなのでしょうか」

ベッドの上で天井を見つめながら質問する僕。

「大丈夫ですよ万里さん。そもそも手術されることに慣れる人なんていませんから。特に男性は苦手な人が多いんです」

カチャカチャと器具を整理しながら優しく答える先生。

「意外ですね。男性の方が痛みに強そうなのに」

「おそらく男性の方が想像力豊かなのでしょうね。映画とか漫画で暴力シーンを見る機会が多いからイメージしやすいのかもしれません。だから怖がらずに気を紛らわせてください」

「じゃあ手術のあいだ会話していても良いですか?」

「かまいませんよ」

会話①【死亡フラグ】

「と言われても…どんな会話すると気が紛れるんですかね」

「手術後にやりたいことを話す、なんてどうでしょう。ハッピーなイメージを膨らませるんです」

「なるほど。あ、手術が終わったら表参道に新しく出来たパン屋に行きたいです」

「なんてお店ですか?」

「『ゴントランシェリエ』っていうんですけど、そこのクロワッサンが絶品らしいんですよ。術後はクロワッサンをお腹いっぱい食べたいなぁ」

「フフフ。なんか戦争映画で戦死する直前の兵士みたいなセリフですね」

「先生???」

会話②【シミ】

「他に気を紛らわせる手段って何がありますか?」

「数をかぞえる、なんてよく聞きますよ」

「あ、じゃあ天井のシミでも数えてみます」

「いいですね」

「(手術室の天井ってシミひとつねぇや…)」

会話③【幻肢痛】

「(そうか。麻酔で痛みを感じないのに手術が怖いのはネガティブな想像のせい。つまり僕が恐怖心を抱いていたのは『現実』ではなく『未来』に対してなんだ。

これは普段の生活にも当てはまるかもしれない。

僕は新しいことを始めるのがものすごく怖いけど、それは現実ではなく未来の不確定な結果、仮定とも呼べるほど不確かなものに対してネガティブなイメージを抱き、勝手に怖がっているからなんだ。

失敗が怖い、失うのが怖い、嫌われるのが怖い、怒られるのが怖い、笑われるのが怖い…

実際は低い壁(問題)なのに、ネガティブな想像力のせいで壁が何倍にも高く見えて尻込みしてしまう。

そこには何もないのに想像力で恐怖や痛みを感じるなんて、まるで幻肢痛(すでに手足を失ったのにその部位に痛みを感じること)と同じじゃないか)」

「フ……幻肢痛、か」

「万里さん、まだどこも切ってませんよー」

会話④【イメージ】

「先生、『未来を何も考えない楽観主義者』と『未来をいたずらに怖がる悲観主義者』は現実を冷静に見ていないという点においては同類だと思うんです」

「急に哲学的なこと言いますね」

「だから僕はもう手術を怖がりません」

「おぉ、すごい」

「さすがに直接見ることはできませんが、いま僕の腕どうなってるか教えて下さい」

「言っても大丈夫なんですか?」

「正直まだ怖いので、イメージしにくい表現でお願いします。プールの時に心臓の遠い部分から水パシャパシャするじゃないですか。あんな感じでお願いします」

「そうですね…この病院の横に大きな坂道がありますよね」

「ありますね、坂道」

「そこを自転車で下るんです」

「気持ちよさそうですね」

「そして一番スピードがのったところで転んだくらい、今は出血しています」

「めっちゃイメージしやすい」

生還

ーーーそんなこんなで無事に腫瘍は摘出されました。

結局泣いたし、結局笑われました。

帰りにゴントランシェリエに寄ってクロワッサンを2個買いました。

ウワサ通り美味しかったです。

途中で死亡フラグ立ったけど、まだ生きています。

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