久し振りに会った友人が、キレイに焼けてて。

「旅行?」と聞いたら石垣島に行ってきましたと。

しかも彼は運が良い事に滞在期間中はめちゃくちゃ天気に恵まれて、東京帰ってきた後に台風が沖縄にぶつかったんですって。

雨男の僕とは逆パターンの人間です。超羨ましい。

いいなー、僕も旅行は天気に恵まれたいなーって言ったら「普段の行いですよ」と笑いながら答えてくれました。

オーケーじゃあ徳を積みまくって雨男の名を返上してやるよって事で、最近は主に虫とかを助けて過ごしています。

現在、ダンサーは副業ですね。

そんな深夜の帰り道、立ち寄ったコンビニの駐車場に大きめのカエルがいました。

どれくらいの大きさかというと、両掌からちょっとはみ出るくらい。

自来也とかが乗ってそうなタイプで、人間の言葉で自分を「わし」とか言いそうヤツ。

流石に助けるのを一瞬迷いました。

でもこのままだと確実に車や自転車に轢かれちゃうよなぁって事で、意を決してコンビニ袋を手袋の代わりにして拾い上げたんです。

僕、実は今までカエルを掴んだ事がなかったんですよ。

だからコレがカエル初掴み。カエルデビュー。ちょっと大人になった気分。

カエルって思った以上に重くて、ビクンビクン跳ねようとするんですね。

いきなり背後から人間に持ち上げられたらカエルもパニックになるか。

でも、それ以上に僕もパニックになったからね。おあいこだよ。

手の中でカエルが跳ねる度に「ひぃぃいいッ」って声にならないような声を出しながら、どこに逃がそうかアタフタする僕。

カエル掴みのデビュー戦としては、かなり荷が重い相手でした。

ところで、なんでカエルってどこから来たかも解らないような場所に出現するんですかね。

だって見つけたの、近くには池も川もない大都会のど真ん中ですよ?

あと、アイツらはどこに行こうとしてるんでしょうか。命の危険を冒してまで。

マルコポーロなの?

そんなことを考えながらやっと草むらを見つけて、いざ離そうとした時でした。

カエルは跳ねるのをやめて、僕の目を見つめてきたんです。

まるで何かを訴えているかのような瞳。

ある可能性が、僕の脳裏をよぎりました。

「このカエル、魔法で姿を変えられたお姫様じゃないのか」

と。

魔法を解いてくれる王子様(万里)を探していたとしたら、この池も川もない大都会に突如出現したのも納得出来ます。

あなたの言いたいことはわかりますよ。

「そんなこと常識的に考えてありえない」

でしょう?

でも、万が一ね。

万が一の可能性としてね。

その常識は絶対に正しいと言い切れますか?

常識を疑わないと可能性というものは生まれませんから。

天動説が主流の中、地動説を唱えたコペルニクスだって僕と同じ気持ちだったに違いありません。

ということは、

万里=ほぼコペルニクス

じゃないですか。

ならばもう、コペルニクそうじゃないか、と。
コペるか、コペらないか。
ここはもう、コペルニクすしかないだろう、と。

そうして意を決してカエルの目を見ながら「あの……」と言ったら、

ピョーーーーーーン

って。

カエルが

ピョーーーーーーン

って跳ねてったの。

そんで僕もビックリして

ピョーーーーーーン

ってなったの。

大の大人が

ピョーーーーーーン

って。

もうコペるどころじゃありませんよ。

「ごめんなさぁい!」

って、草むらに消えていったカエルに向かって謝りましたからね。
僕、助けた側なのに。

帰宅してもまだ心臓がドキドキしていて、なかなか眠れません。

「湿度が高いから余計に寝付けないのかな」そう思って窓を開けると夜風が涼しくて。

やっと眠れたのは明け方でした。

朝起きたら窓辺が水浸しだったんです。

ビチャビチャの床を見て、ピーンときましたね。

カエルのヤツ、恩返しに来たんだなって。

鶴の恩返しよろしく、「あの時助けてもらったカエルです」って。

だとしたら機織り用の部屋を用意しなきゃ。何を原材料として機織りするのかナゾだけど。

窓に近づくと、外は雨が降っていました。

風が強くて網戸から雨が吹き込んでて。

それで窓辺がびしょ濡れになっていたんです。

あのカエル、やっぱり100%カエルだったみたい。

常識的に考えて。

「普段の行い……か」

床を拭きながら小さくつぶやきました。