万里の日記

お兄ちゃんは大変だ。

ハウスダンスインストラクター万里の日記

僕が四歳の頃、近所に『ユウ君』という幼馴染が住んでいました。

ちょっとガンコでイタズラ好き。自分のことを『オレ』と呼んでいたオマセさん。

ユウ君は内気だった僕をいつも遊びに誘ってくれました。

あれは二人で僕の家で遊んでいた時のこと。

ふと聞いてみたんです。

「保育園のお迎え、いつもパパだよね」

って。

「ユウ君のママ、最近見ないね」

「今、お家にママがいないから」

「どこにいるの?」

「遠く」

「いつ帰ってくるの?」

「わからない」

子供だった僕は「ふーん、そっか」くらいにしか思いませんでした。

「バンリ、今お兄ちゃんいる?」

何かを思いついたように顔を上げるユウ君。

「うん。二階にいるよ」

「呼んできて!」

ひとりっ子のユウ君は兄弟が羨ましいのかな。部屋で勉強していた中学生の兄を呼びました。

「ユウ君ひさしぶり。どうしたの?」

階段を降りてきた兄は、僕とユウ君の前に麦茶を入れたコップを置いてソファーに座りました。

「実は……」

兄に向かい、かしこまって正座するユウ君。どうしたんだろう。

「オレを弟子にしてください」

僕はマンガみたいに麦茶を吹き出しました。

「ごめん、話がわからないんだけど」

慌ててカーペットの麦茶を拭きながら答える兄。

「どうしたら『お兄ちゃん』になれますか?オレ、お兄ちゃんになりたいんです!」

僕はゴホゴホとむせながら、保育園での七夕の出来事を思い出していました。

そういえばユウ君、短冊に『おにいちゃんになれますように』って書いてたな。それこそ『宇宙飛行士になれますように』と同じトーンで。あれ本気だったんだ。

「お兄ちゃんになる方法を教えてください」

「そうだなぁ」

真顔で立ち上がる兄。どうかユウ君を傷つけずに真実を教えてください。『弟か妹ができたらお兄ちゃんになるんだよ。頑張ってなれるものじゃないんだよ』って。

「まず腰に手を当てて」

「うん」

「ちょっと怒った顔して」

「こう?」

「そして『お兄ちゃんの言う事を聞きなさい!』って言えばいいんだよ」

変なこと教えるなよ兄ちゃん。

「お兄ちゃんの言うことを聞きなさい!」

ユウ君も信じるなよ。

「うまいうまい!もう立派なお兄ちゃんだよ!」

手を叩いて大爆笑する兄。

フフン、と得意げな顔のユウ君。

なんでそんなにユウ君はお兄ちゃんになりたがるんだろう。弟の方が気楽でよっぽど良いのに。

そう思いながらコップに残った麦茶を飲み干しました。

なぜか翌日から僕の三輪車の練習が始まりました。

場所は家の前の私道。先生はユウ君。

当時、まだ三輪車に乗れなかった僕にとって本当に苦痛でした。

「僕、三輪車に乗りたくない」

「頑張れよ。乗れたら遠くに遊びに行けるんだから」

「遠くって?」

「たとえばエンピツ公園とか」

エンピツ公園とは、エンピツの巨大オブジェがシンボルの地元で一番大きな公園。

沢山の遊具と広い芝生がある、子供達のユートピアみたいな公園です。

しかし僕たちの家からは大人が歩いて15分と遠く、また信号のある大きな道路を渡るため保護者が一緒じゃないと遊びに行けないのが難点でした。

「エンピツ公園……」

「三輪車に乗れれば好きな時に好きなだけ遊べるぞ!タコの滑り台も、お城ジャングルジムも、ゆりかごブランコも!」

確かに魅力的な話だけど、子供だけで行ったら母に怒られる、絶対。

「エンピツ公園には行かないから、三輪車は乗れなくてもいいよ」

小声で答えると、ユウ君は腰に手を当てて眉間にシワを寄せて言いました。

「ダメ!お兄ちゃんの言う事を聞きなさい!」

オマエは僕のお兄ちゃんじゃない。

なんて反論、気弱な僕に言えるワケなくて。

「うん」とだけ小さく呟いて、しぶしぶ三輪車にまたがりました。

保育園から帰ると三輪車の練習をする日が続きました。

そしてほぼ毎日、僕は泣いていました。

ペダルを踏み外してスネを強打しては泣き、小石につまずいて転んでは泣き……今思い出しても本当に泣いた記憶しかありません。

「もう三輪車イヤだよぅ」

泣きべそをかいて地面に座り込むと、ユウ君が横に座って言いました。

「乗れるまで一緒に練習してあげるから」

「それだとユウ君は遊べないじゃん。僕が乗れるまでドロ団子作りも、木登りも、縄跳びだって出来ないんだよ?ツマラないでしょ」

「そんなの別にいいよ」

「なんでそこまでしてくれるの?」

「それはオレがお兄ちゃんだからさ」

まだ言ってるのか。

「お兄ちゃんだと、なんで三輪車の練習をしてくれるの?」

「だって弟の面倒を見るのがお兄ちゃんだろ」

僕はオマエの弟ではない。

お兄ちゃんに任せろ、と立ち上がるユウ君。

そのキラキラした目を見て僕は確信しました。

これ絶対に『お兄ちゃんごっこ』だなって。

ユウ君はガンコだから飽きるまでやるんだよなぁ。しばらく付き合わされるのか……

そう思うと頭がクラクラしましたが、もう覚悟を決めるしかありません。

「三輪車に乗れないからって、そんなに落ち込むなよ」

今落ち込んでるのはユウ君のせいだからね。

「あ!元気が出るように面白いの見せてやるよ!」

「なに?」

「オレ、ウィリー出来るんだぜ」

「すごい!見たい見たい!」

「こないだパパと練習して一回だけ出来たんだ。見てて」

そう言ってユウ君は颯爽と三輪車を漕ぎだして

盛大に転んでました。

「だいじょうぶ!?」

「うぅ……」

地面にうつ伏せのまま小さなうめき声を上げるユウ君。

「もしかして、泣いてるの?」

「泣いてないから。お兄ちゃんは泣かないから。オレ、お兄ちゃんだから」

なんだか自分に言い聞かせてるみたい。

泣きたい時に泣けないなんて、やっぱりお兄ちゃんて大変なんだなぁ。

僕は結果的に面白いのが見られたので元気が出ました。

「やったやった!やったよ!」

三輪車に乗れるようになったのは一週間後。

一緒に喜んでくれると思ったユウ君はなぜか元気がありません。

ユウ君はうつむいたままボソリと言いました。

「ごめん、もうすぐ遊べなくなるんだ」

え?どういうこと?

「だから最後に、どうしてもバンリには三輪車に乗れるようになって欲しくて」

最後ってなんだよ。もう遊べないってこと?

グニャリと歪む視界。涙が溢れ出して止まりません。

なんだよそれ。もしかして引越すの?もう会えないの?

下を向いたまま両手でシャツの裾をギュッと握りしめるユウ君。

何度も見たことのある、泣くのを我慢している時のクセ。

こんな時でも『お兄ちゃんは泣かない』なのかよ。

今くらい僕と一緒に泣いてよ。それともお兄ちゃんになる方が大事なのかよ。

そう考えると胸がギュウっと苦しくなり、ますます涙が止まらなくなって。

なにが『お兄ちゃんになりたい』だよ!ユウ君なんか大っ嫌いだ、バーカッ!

そう言ってやろうかと思ったけど、やっぱり気弱な僕はそんな事言えなくて。

というか、子供すぎる僕にはこの寂しいんだか怒ってるんだかのグチャグチャの感情をどう言葉にすれば良いのかまだわからなくて。

「うん」とだけ小さく呟いて家に帰るのがやっとでした。

背中越しに聞こえるユウ君が鼻をすする音。

気のせいかもしれないけど。

翌日の日曜日。

お昼過ぎにユウ君が遊びにきて、いつものように家の前で三輪車に乗っていました。

「一緒に遊べるの、今日で最後かもしれない」

ユウ君の言葉を聞いて再び泣きそうになる僕に彼は続けました。

「だからさ、二人で冒険しようぜ」

「冒険ってどこに?」

キョロキョロと周りを見てから僕の耳元で囁くユウ君。

「エンピツ公園だよ」

こうして僕たちは三輪車に乗ってエンピツ公園へ出発したのです。

何度か迷子になったものの、無事エンピツ公園が見えてきました。

この時に初めて子供だけで信号を渡ったんですが、あまりに怖くて泣きながら手を挙げて横断したのを覚えています。多分ドライバーの人達も驚いていたでしょう。

なんとか公園入り口に着いたのに、ユウ君は「行きたいところがあるから一緒に来て」と公園を通り過ぎてしまいました。

ユウ君に連れてこられたのは公園横にある小さな病院。

僕たちは入り口横の駐輪スペースに三輪車を止めて中に入りました。

二階に上り、一番奥の病室の前。

ドアを開けながらユウ君は言いました。

「ママ!来たよ!」

え、ママ?

ベッドにはユウ君のママがリクライニングを起こした状態で本を読んでいました。

「ユウ?!なんで来たの!?」

「三輪車で来た!」

多分手段を聞いてるんじゃないと思うよ。

「本当にここまで三輪車で来たの?」

「うん!」

ベッドに駆け寄りながら答えるユウ君。

あんな嬉しそうな顔、久しぶりに見た気がします。

「パパには病院に来ること言った?」

「言った」

「バンリ君のお母さんにも?」

「言った」

「バンリ君はどうして来たの?」

「バンリもお見舞いに行きたいって言ってたから」

真実が一つもないよユウ君。

でも僕はその会話のテンポの良さに頷くことしかできませんでした。

最近ユウ君のママを見なかったのは入院していたからか。

病気や怪我をしたのかな?それにしては二人とも楽しそうに話してるんだよな。うーん、わからない。

「オレ、トイレ行ってくる」

部屋を出てトイレに向かうユウ君。

「ねぇ、ご病気なの?」

恐る恐る聞くとユウ君のママは「あぁ」と小さくつぶやいて、お腹をさすりながら言いました。

「今、お腹に女の子の赤ちゃんがいるのよ」

なるほど。ユウ君はもうすぐ妹が出来るからお兄ちゃんになろうと頑張っていたのか。

「来てくれてありがとうね。きっとユウが無理やり連れて来たんでしょ。あの子バンリ君のことが大好きだから、これからも仲良くしてあげてね」

それを聞いて、ずっと我慢していた感情が一気に溢れました。

「僕だってユウ君が大好きだもん。ずっと仲良しでいたいもん。でももう遊べなくなるんだって。せっかく三輪車に乗れるようになったのに、こんなのイヤだよ」

「遊べなくなるって、誰が言ったの?」

「ユウ君が言ったの。遊べるのは今日が最後かもしれないって」

両腕で拭っても拭ってもボロボロとこぼれ続ける涙。

「ごめんね、でもそれユウの勘違いだから安心して」

ユウ君のママは涙をシャツの袖で拭きながら説明してくれました。

自分に妹ができるとわかった日、「オレも赤ちゃんの面倒見る!」と張り切っていたユウ君にパパが冗談でこう言ったんです。

「ユウにできるかな?赤ちゃんのお世話は遊べないくらい忙しいんだぞ」

と。

それを真に受けたユウ君は、「赤ちゃんが生まれたら本当に誰とも遊べなくなるんだ」と信じてしまったようなのです。

これからも一緒に遊べると聞いた僕は、嬉しくてピョンピョンと小さく飛び跳ねました。

「どうしたの?」

ドアの前でびっくりしているユウ君。

「ユウ、こっち来て」

ママがさっきの説明をすると更にびっくりしていました。

「じゃあ、これからもバンリと遊んでいいの?」

「もちろん。でもお手伝いはちゃんとしてね」

ユウ君は黙ったまま。

おかしいな。僕以上に喜ぶと思ったんだけど。

「ユウ君どうしたの?」

顔を覗き込むと、無言で両目いっぱいに涙を溜めていました。

「もしかして、泣いてるの?」

「泣いてないから。お兄ちゃんは泣かないから。オレ、お兄ちゃんだから」

相変わらず自分に言い聞かせるようなセリフ。

でもそれって『本当は泣きたいけど我慢してます』と言ってるのと同じじゃないですか。

それがおかしくて、つい笑ってしまいました。

「ほら、遅くなる前に帰らないと皆んなが心配するわよ。ロビーまで送るから」

「わかった」「ユウ君のママ、またね」

ロビーに向かう間、ユウ君はずっとママと手を繋いでいました。

一見すればお母さんに甘えてる男の子ですが、僕にはユウ君がお母さんと妹を守っているように見えたんです。

「ママ、おなか痛くない?」「ここ滑りやすいよ」「ここから階段だからね」

そう言いながら歩くユウ君が、いつもよりちょっとだけ大人に見えて。

そしてちょっとだけユウ君がカッコよく見えて。本当にちょっとだけなんだけど。

「なんだ、ちゃんと『お兄ちゃん』じゃん」

その時初めて思いました。

病院を出た僕たちは再びエンピツ公園の前に到着しました。

「さぁバンリ、遊ぼうぜ!」

「んー、今日はもう帰ろうよ」

予想外の返事に驚くユウ君。

「なんで?」

「だってもうすぐ夕方だし。それに今日は『最後』じゃなかったんだから、またいつでも来られるじゃん」

ユウ君はハッとした顔で「そっか。そうだよな」と言うと少しだけ笑いました。

その時に教えてくれたんです。

僕と遊べなくなる前に、どうしても二人でエンピツ公園で遊びたかったんだって。

だから熱心に三輪車の練習に付き合ってくれたんですね(お兄ちゃん気分を味わいたかったのもあると思いますが)

普段はお兄ちゃんぶっているのに子供なんだから。同い年だから当然なんだけど。

さぁ帰ろう!とペダルを踏み込んだその時。

僕の三輪車の後輪が片方外れてしまいました。

どうしよう、これじゃ帰れない。

僕たちは壊れた三輪車を前に呆然としました。

四時のチャイムが響くエンピツ公園。もう遊んでる子供はほとんどいません。

僕たちは街灯下のベンチにいました。

ぐずる僕をユウ君は「お兄ちゃんが直してやる」と慰めてくれました。

だけど所詮は四歳児。『直す』と言っても、近くに落ちていた石でトンカチのようにカンカンと車輪を叩くことしか出来ません。

何度叩いても外れる車輪。空はどんどん暗くなっていきます。

「もうすぐ直るから」鼻声になりながら車輪を叩き続けるユウ君。

きっとそれじゃ三輪車は直らないよ。僕たちはもう二度とお家に帰れないんだ。

僕は心細くなってワンワンと声を上げて泣きました。

「ここにいた!」

背後から聞き覚えのある声。

「騒がしいと思ったら、やっぱりバンリとユウ君か」

お兄ちゃん!迎えに来てくれたんだ!!

この時ほど兄に感謝したことはありません。

「さぁ、二人とも早く帰るよ」

「うん!」

半ベソで兄の両手を握る僕とユウ君。

「母さんたち、ものすっごく怒ってるから」

それを聞いて僕はもっと泣きました。

帰ると、僕たちは家の前で待っていた母とユウ君のパパにキツくお説教されました。

特にユウ君のパパはすごく怒っていて、母と兄が止めなければ本当に殴るんじゃないかってくらいの剣幕でした。

グズグズに泣く僕とは違い、泣かず、言い訳もせずに「ごめんなさい」と謝るユウ君。

しかしユウ君のパパは怒りが収まりません。

「おまえ、そんなんじゃお兄ちゃんになれないぞ!」

ユウ君の小さな体がビクンと小さく弾けました。

多分、いや、絶対にそれは言ってはいけない言葉なんだ。

僕はユウ君がお兄ちゃんになるためにどれだけ頑張っていたかを知ってる。

そのために僕と遊ばない覚悟をしたのを知ってる。

ママの手を握るカッコいい姿を知ってる。

だから決して『お兄ちゃんになれない』なんて言っちゃいけないんだ。

ユウ君は今にも泣き出しそうでした。

涙が溢れないように上を向いてるけど、顔はグシャグシャに歪んで、シャツの裾を握る手は小刻みに震えています。

ダメだよ。

ユウ君はお兄ちゃんだろ。お兄ちゃんは泣かないんだろ。

「ユウ君に三輪車を教えてもらったの」

咄嗟に言葉が出ました。

「練習はイヤだったけどすごく楽しかった」「一番面白かったのはユウ君がウィリーして転んだ時」「ユウ君は短冊に『おにいちゃんになれますように』ってお願いしてたよ」「それでお兄ちゃんの弟子になったんだ」「ビックリして麦茶をこぼしちゃった」「信号を渡る時は怖くて泣いちゃった」

とにかく喋り続けました。ここ最近の出来事を思いつくかぎり、ずっと。

「ちょっと、急にどうしたの」

母が肩を掴みましたが僕は喋るのをやめません。

泣きながらだったので誰も内容は理解できなかったでしょう。

それで良いんです。

泣きそうなユウ君の気を逸らしたかっただけでしたから。

だって「もう遊べない」って言った時でも泣かなかったのにここで泣かれたら、あの時に僕が感じた寂しいんだか怒ってるんだかわからないグチャグチャの感情まで無駄になる気がして。

だから、どうしてもユウ君には泣いてほしくなかったんです。

状況が飲み込めずポカンと僕を見る母、兄、ユウ君のパパ、そしてユウ君。

良かった、いつものユウ君の顔だ。

もう泣かないね。

泣きたい時に泣けないなんて、本当にお兄ちゃんは大変だよね。

でも僕は弟だから泣いてもいいんだ。

やっぱり弟の方が気楽でいいや。

そう思ったところで意識がふっと遠くなりました。

気がついたら家のベッドに寝ていました。

兄の話では、僕は喋り終えると気を失ったそうです。

一日に色んな事がありすぎて四歳の僕は疲れていたんでしょうね。

三輪車で遠くの公園まで行って、泣きながら信号渡って、ユウ君のママのお見舞いして泣いて、三輪車が壊れて泣いて、怒られて泣いて、喋りながら泣いて……

僕、泣いてばっかりだな。

今思えば泣き疲れただけかもしれません。

三輪車の冒険から一週間が経った頃、ユウ君のママが小さな赤ちゃんを連れて帰ってきました。

名前はユキちゃん。可愛い女の子です。

ついに本物のお兄ちゃんになったユウ君は、「お兄ちゃんになりたい」と言わなくなった代わりに、何かあるたびに「お兄ちゃんは大変だ」とこぼすようになりました。

あれはユウ君の家で遊んでいた時のこと。

グズっているユキちゃんをあやしながらユウ君が言ったんです。

「あー、お兄ちゃんは大変だ」

って。

だけどユキちゃんを見ている顔は満面の笑顔で。

むしろ、ものすごく楽しそうで。

「全然大変そうじゃないじゃん」

そう言ってやろうかと思ったけど、気弱な僕にはそんな事言えなくて。

「そうだね」と笑って二人でユキちゃんをあやしました。

僕たちを見て、ユキちゃんもちょっとだけ笑ってくれました。

おしまい。

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