先週の火曜日、インフルエンザ予防接種を打ってきました。
病院はこのブログに何度か出ている名医(迷医?)の女医さんのところです。
「先生、今年のインフルエンザ注射は痛いんですか?そんな噂があるから怖くて……」
「安心して。そんな心配しないで大丈夫よ」
僕のシャツの袖をまくり左上腕部をアルコール消毒しながら、先生は優しく笑いました。
「準備はいいですかー」
「はい」
「腕の力を抜いてー」
「はい」
「痛いですよー」
痛いのかよ。
「先生ちょっと待ってください」
「どうしたの?」
「そこは『痛くありませんよ』とか、せめて『チクっとしますよ』じゃないんですか?『痛いですよ』言われたら『そうか痛いのか』って怖くなっちゃうんですけど」
「いやね、今年のインフルエンザワクチン本当に痛いのよ。なんでかしらね」
知らないよ。
「そんなに痛いんですか?」
「人にもよると思うけど、私も打った時に痛いと感じたわ。今年はワクチンの当たり年かも」
当たり年ってなに?ボジョレー??
「さ、打ちますよ」
強引に注射しようとするので、僕も腹をくくって腕を出しました。
「はい刺しまーす」
「ン゛ン゛ン゛ん゛ん゛ン゛ーーーっっ」
緊張のあまり変な声が出ました。
「万里さんちょっと待って」
笑いながら腕を離す先生。
「今の音は何ですか」
「注射が超怖くて。泣くの我慢したら声出ちゃって……」
「牛の真似してるかと思ったわ」
注射中に突然牛の鳴き真似をする患者とか怖すぎるだろ。
「危ないので変な声は出さないように」
ツボったらしく先生は目にうっすら涙を溜めていました。
「先生、注射の時に世間話してもらっていいですか?話してれば気が紛れるんですよ」
「いいわよ。とっておきの話をしましょう」
そう言うと再び先生は僕の腕を掴み、世間話をし始めました。
「こないだ患者さんの腫瘍摘出手術した時、〇〇が△△だったので×××の皮膚を切除したんだけどね……」
先生の『世間』がすげぇ特殊。
あと内容が痛々しすぎて全然気が紛れない。
先生には悪いけど、黙って注射してもらったほうがマシだったと後悔しました。
「終わりましたよ。ね、痛かったでしょ?」
相変わらず『痛み』を前面に押し出す先生。確かに痛かった。でも今回の注射は泣かずに終わりました。ギリギリだったけど。
「ついでにどこか診察しますか?」
「最近、腕の裏側に赤いポツポツが出来たんです。診てもらえますか?」
う〜ん、と唸りながら僕の腕をルーペで見る先生。
「これ『色素沈着症』ですね」
「なんですか?それ」
「シミです」
「シミ?」
「ただの老化現象ですよ」
それを聞いてやっぱり少し泣きました。