今日、葛飾のスタジオに向かう途中で猫(キジトラ)が僕の目の前をノシノシと横切ったんです。
そして民家の玄関前でゴロンと横になって「…フゥ」と息をついたのですが、この仕草がものすごく人間くさい、というかオジサンくさかったんですね。
まるで銭湯でよく見かける『熱湯風呂から出て湯船の淵に腰を掛けるオジサン』そのものでした。
「もしかして悪い魔女に魔法で猫に変えられたオジサンなんじゃないか」
と思うくらいの完璧なオジサンオーラ。こころなしか目つきもオジサンっぽい。
これがものすごく可愛くて。
猫好きの人は解ると思うのですが、オジサンっぽい猫ってカワイイんですよ。
逆に猫っぽいオジサンは全く可愛くないから不思議ですよね。語尾に「〇〇ニャ」と付けたり羽虫を追いかけるオジサンがいたら恐怖でしかありませんからね。
話がそれましたが、とにかくその猫がものすごく可愛かった(オジサンくさかった)ので
「どうしてもお近づきにならねば!」
と思い、しゃがんで「チチチチ」とやったワケです。
えぇ。案の定逃げられまして。
最初の「チ」とほぼ同じタイミングで家の裏までダッシュしていきました。
第一印象から僕を不審者認定していたみたいですね。
「オジサン(猫)あんな速く走れるのか…会社のスポーツ大会で株が上がるタイプのオジサンだ」
なんて思いながら、それでも諦めきれない僕は周囲に誰もいないのを確認してから
「…おーい」
と呼んでみました。
いつものパターンなら猫がノーリアクションで僕が通行人に「何あの人クスクスプーwww」と笑われる展開なんですが、今回は天が味方してくれました。
なんと猫が鳴き返してくれたんですよ。
家の奥から
「アァアアン」
って。
猫にしては声が低め。その鳴き声がやっぱりオジサンっぽくて面白いから、もう一度
「おーい」
と呼んでみるとやはり
「アァアアン」
と返ってきました。
僕と客(猫)との完璧なコールアンドレスポンス。
この一体感、そしてライブ感。気分は武道館ですよ。「2階席のみんなー!」つってね。
なんだかテンションが上がってきて少し大きめの声で
「おーーーい」
と呼んでみたら、今度は玄関横の窓がガラっと開いて
「アァアアン!?さっきから何なんだよ!!」
と本物のオジサン(人間)が出てきました。
一瞬
「あれ?魔法が解けて人間に戻ったのかな」
と思いました。
まぁ、完全な現事実逃避なんですけどね。
家の周囲に人がいないか確認したけど家の中は未確認でした。盲点。
そしてこのオジサン、人間にしては声が高め。
僕が『オジサン(猫)』の声だと思っていたのは『オジサン(人間)』の声だったんですね。
僕はこの人とコールアンドレスポンスをしていたみたい。
完全なワンマンライブ。
ライブっつーかむしろ会話。
気がつくと通行人が数人、こちらを見て「何あの人クスクスプーwww」と笑っていて。
やっぱりいつもどおりの展開で、予定調和すぎて安定感すら感じました。
「す、す、すみません!何でもありません!」
顔を真っ赤にしながら相手に謝ってダッシュでその場から逃げました。
走りながら、メチャクチャ恥ずかしくて、穴があったら入りたいくらいで。
悪い魔女がいたら魔法をかけて猫にでもしてくれ、と走りながら願ったくらいで。
というわけで。
我こそは!という魔女の方はご一報ください。
僕、立派なオジサンなんで。
猫になったら絶対に「可愛い」言われる自信あるんで。
魔女の皆さん、ご検討のほどよろしくお願いいたします。